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競技レポート

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金2・銀2で日本メダルラッシュに沸く! パラ競泳世界選手権2019

表彰式で金メダルを胸に笑顔の木村(右)と富田(撮影:越智貴雄)

 ロンドンで開催されているパラ競泳の世界選手権。大会6日目の14日(現地時間)、男子200m個人メドレー(S14=知的障がい)で東海林大(三菱商事)が2分8秒16の世界新記録で優勝した。さらに男子100mバタフライ(S11=視覚障がい)では木村敬一(東京ガス)が金、富田宇宙(日体大大学院)が銀と、日本人ワンツーフィニッシュを披露。その直後にはキャプテン鈴木孝幸(ゴールドウイン)が男子200m自由形(S4=運動機能障がい)で今大会自身3つ目の銀メダルを獲得した。

東海林、3年前の悔しさバネに“世界王者”で東京パラへ

世界新を出し雄叫びをあげる東海林(撮影:越智貴雄)

 東海林が、同じS14クラスの山口尚秀に続いて、世界新記録で東京パラリンピックの内定を決めた。ゴール後、“覇者”となったことを知ると、水面を叩くようにして水しぶきをあげながらガッツポーズを繰り返した東海林。そこには3年前の“雪辱”の意味が込められていた。

 2016年、有力候補の一人としてリオデジャネイロパラリンピックの選考会に臨んだ東海林だったが、実力を出し切ることができず、“世界最高峰の大会”への道が断たれた。

 その時の悔しさを晴らしたいと臨んだ今レース。午前に行われた予選では2分13秒22の全体4着で決勝進出を決めた。

「全体的にうまくスピードに乗れたなと思ったが、タイム的には全然いまいちです。(決勝では)最後まで強い気持ちで不安を吹き飛ばせるようなレースができたらなと思います」

最後の自由形で力強い泳ぎを見せた東海林(撮影:越智貴雄)

 午後6時半過ぎに行われた決勝では、最初のバタフライから予選よりも速いタイムで泳ぎ、2種目目の背泳ぎを終えた時点で、トップとは3秒07差で4着につけていた。そして3種目目の平泳ぎではトップの2人と並び、わずか0.15秒差の2着でターンし、最後の自由形に臨んだ。

 序盤でトップに躍り出た東海林。終盤には猛追を受けるも、そのまま逃げ切ってゴール。自らが金メダリストになったことを知ると、大きなガッツポーズを繰り返し、喜びを爆発させた。

「思う存分楽しみ、最後まで強い気持ちを持ったレースができたと思います。最強のライバルたちに勝てて自信になった」と東海林。世界新記録を樹立したことについて訊かれると「まさか、信じられないと思った」と語り、そしてこう続けた。

「超、気持ちいいです」

 3年前の悔しさをバネに這い上がってきた東海林。来年は“世界王者”として東京パラリンピックに挑む。

木村が金で東京パラ内定!富田と鈴木は銀で出場枠獲得

金メダルを獲得した木村(撮影:越智貴雄)

 その約1時間後に行われた男子100mバタフライ(S11)では、今度は日本人“ワンツー・フィニッシュ”に日本の応援団がわいた。

 2日前の12日、(今大会これまで4位、3位、2位ときて)あとは1位しか残っていないので、それを目指して頑張ります」と語っていた木村。同じく世界ランキング1位で臨んだ男子100m平泳ぎ(S14)では悔しい銅メダルとなり、個人種目では最後の100mバタフライにかける思いは強さを増したに違いなかった。

 予選では1分02秒80の好タイムを出した富田が全体のトップに。木村はその富田に次ぐ1分04秒76のタイムで2着につけていた。

 決勝では4レーンに富田、5レーンに木村と、隣あわせでの日本人同士の争いが繰り広げられた。水上に浮き上がってきた時には頭一つ抜けていた木村がリードをキープしたまま50mのターンを折り返した。木村と富田との差は0.18秒差。さらに富田と並ぶようにして3レーンのロシア人選手が迫っていた。

 後半、先頭の木村は富田との差をさらに広げる泳ぎを見せ、1分02秒22で優勝を決めた。一方の富田はコースロープにひっかかったことがロスとなり、予選よりも遅い1分03秒64でゴール。それでもロシア人選手に差をつけて2位をキープし、木村との“ワンツー・フィニッシュ”を決めた。

 レース直後、木村が富田に近寄り、抱き合うようにしてお互いの健闘を称え合った。“そしてそろって喜びにわく応援団に手を振った。

「おめでとう」という富田の言葉が素直に嬉しかったという木村は「日本人でワンツー・フィニッシュを決めることができたのは僕自身初めて。宇宙さんと並んで表彰台に上がれるのが嬉しい」と語った。

 練習拠点をアメリカに移し、トレーニングを積んできた木村。今大会は「タイムとしては低調な種目が多く満足いくレースができなかった」と悔やんだが、「そのなかでも、こうやって勝ち切れる勝負強さがついてきたのかなと思います」とアメリカでの厳しいトレーニングによる成果について語った。

 一方、富田は「木村くんともっといいレースをしたかった。それでも目標のワンツー・フィニッシュを決められたことは素直に嬉しい」と語った。明日の最終日には、富田が最も得意とし、現在世界ランキング1位の男子400m自由形(S11)に臨む。「強い選手が出てきているが、自己ベストを出して内定獲得できるように頑張りたい」と金メダルに強い意欲を示した。

 木村と富田のレース直後に行われた200m自由形(S4)では、キャプテンの鈴木がトップとわずか0.16秒差の2分53秒22の好タイムで銀メダルを獲得。自己ベストを大幅に更新し、調子の良さをうかがわせた鈴木。明日の最終日には今大会5種目目となる男子50m平泳ぎ(SB6)に臨む。

「(4、3、2位ときていた)木村も(金メダルを)取りましたからね。そろそろ僕にも回ってきてもいいはず。徐々にトップとの差は縮まってきているので、なんとかラストの種目で取れたらいいなと思っています」

 銀3、銅1と全種目でメダルを獲得している鈴木。明日は最高のかたちで有終の美を飾るつもりだ。

(文・斎藤寿子)

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