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パラコラム

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アジアパラ大会ルポ(1) 中国なのにGoogle、LINEも利用自由、豪華な食事、ピンバッジ交換会が流行

報道機関が集まるアジアパラのメインメディアセンター(撮影:越智貴雄)

 22日、4年に1度開催されるパラスポーツの祭典「アジアパラ大会」が中国・杭州などで開幕した。

 大会のテーマは「心を合わせて、夢を輝かせよう」。杭州は中国のなかでも発展が著しい都市で、電子商取引大手のアリババ社の本社がある。同社は、アジアパラ大会の公式スポンサーでもある。

 報道関係者が集まるMMC(メインメディアセンター)は、同市内の杭州国際博覧センター内に設置されている。44の国と地域から出場する選手たちの勇姿は、ここを拠点に各国に伝えられる。

 MMCに着いて驚かされたのが、施設の大きさだ。敷地面積は5万平方メートルで、テレビ、新聞、ネットメディアなどのスタッフが記事や放送コンテンツを制作する。9月23日~10月8日に開催された健常者のアジア大会にも参加した記者によると、「MMCの規模はアジア大会と同じぐらい。食堂の中にあったファストフード店はなくなったけど、場所も設備もほぼそのままで使われている」と話す。パラの大会と健常者の大会を同等に扱うという中国の意志が伝わってくる。

各国の報道機関は、メインメディアセンターで情報収集を行ったり記事や写真を完成させる。主要なカメラメーカーの修理センターまで備わっている(撮影:越智貴雄)

 中国のインターネット環境では、原則としてGoogleやFacebook、LINEなどの情報系アプリは使用できない。どうしても必要な場合は、仮想プライベートネットワーク(VPN)を使用して中国国外のサーバーに接続する必要がある。それも近年ではVPNの規制が厳しくなっていて、事前に日本で「中国でも使えるVPN」を調べて契約したにもかかわらず、接続に苦労することが多かった。

 こうなると携帯電話の回線に頼るしかない。携帯キャリアによって異なるが、日本で契約した携帯端末であれば、街の中でもGoogleやLINEに接続できる。ただし、容量の上限を超えたら追加料金を支払わなければならない。仕事で使うには実用的ではない。

 そういった事態も想定して、日本国内の人との連絡は、中国製のWeChatも使えるように準備してきた。それでも普段使い慣れているツールをできれば使いたい。「ネット環境では苦労しそうだな……」と、中国に入国してすぐに心配になった。

 ところが、MMCに到着してメディア用のWi-Fiに接続すると、その不安は消し飛んだ。GoogleもLINEもすべて自由に使えるし、通信速度も問題ない。VPNも調子がいい。MMCの外に出ても、各競技会場では同じように使えた。各国の記者たちには中国の中にも「インターネット・フリー」の世界が広がっっていた。

 つまりは、インターネットについては外国人は自由に接続してもいいが、中国人は制限するということなのだろう。国際都市としての発展を目指す杭州の戦略が垣間見えた気がした。

食堂には中国ならではの料理はもちろんのこと、ハラル料理も用意されている(撮影:越智貴雄)

 食堂に行くと、ランチは1回20元(約400円)のビュッフェ方式で、杭州特産の料理をはじめ、さまざまな中華料理を楽しむことができる。時間無制限で食べ放題、ソフトドリンクも飲み放題だ。ざっと数えただけでも50種類以上の料理から好きなものを選んでテーブルに持って行く。イスラム教徒向けのハラル料理も用意されている。

 日本から来たある記者は「メニューは毎日変わるので、あきないね。21年の東京オリンピックの時は無料の弁当が大量廃棄され、有料で提供された料理もまずいものが多くて問題になった。あの時は400円もするカップラーメンぐらいしか食べれるものがなかったから、今回はありがたい」と苦笑いする。知人の記者とは「東京オリンピックが『おいしくない大会』だったのは、コロナのせいだよね…」と慰め合うしかなかった。

 中国では、客人に豪華な食事をもてなすことは日常的な風景だ。ある中国人の記者は「世界中から集まってきた人に中国を楽しんでもらいたい」という。その精神は、海外の大会関係者への“おもてなし”でも徹底されていた。

メディアやボランティアらが混じり合いながらピンバッチ交換を行なっていた(撮影:越智貴雄)

 ピンバッジの交換会は自然発生的に始まる。通路で交換会が始まったのを見て、取材に同行したカメラマンが東京オリンピック・パラリンピックのバッジを渡すと、「ありがとう!私のも持っていっていいから選んで!」と言われた。その後に簡単な自己紹介をして、ラインやインスタグラムなどのSNSのアカウントを交換し合うのが通例だ。こうやって民族と言語の壁を超え、人と人がつながっていく。(続く)

>>>(2)では、MMCで仲良くなった海外記者から聞いた各国の注目選手を紹介します。

文:西岡千史

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