「ヒーローが帰ってくる!」パラ陸上世界選手権、ロンドンで開幕!
14日、「WORLD Para Athletics CHAMPIONSHIPS LONDON 2017」(世界パラ陸上競技選手権大会)が開幕。23日までの10日間、熱戦が繰り広げられる。競技会場は、「ロンドンスタジアム」。パラリンピック史上初めて観戦チケットが完売し、世界最高峰の大会として最大の盛り上がりを見せた2012年ロンドンパラリンピックの舞台に、再び世界各国からトップアスリートたちが集結。日本からは39名の選手が出場する。
3人のリオメダリストに注目
昨年のリオデジャネイロパラリンピックで銀メダルを獲得した、男子走り幅跳び(T42)の山本篤(スズキ浜松AC)が狙うのは、もちろん「金メダル」。今大会優勝すれば、2013年、2015年に続く「世界選手権3連覇」となる。
リオ後、自己記録更新は一度もないが、それでも3月のドバイ遠征で出した6m11は、2017年シーズンでは世界ランキング2位の記録だ。リオの金メダリスト、Heinrich Popow(ドイツ)が欠場の可能性もある中、自らの大ジャンプでロンドンの観客たちを唸らせるつもりだ。
6月の「日本パラ陸上競技選手権」では、1分00秒40と目標としていた「1分切り」には至らなかった。だが、実は2017年シーズン、1分を切ったタイムを出しているのは、リオ銀メダルのAnrune Liebenberg(南アフリカ)ただひとり。そのLiebenbergとともに、リオでは58秒台の好記録を叩き出し、金メダルを獲得したLI Lu(中国)に、どれだけ近づくことができるかが、メダル獲得のカギを握る。
車いすの部では、リオで400m、1500m(T52)で銀メダルを獲得した佐藤友祈(GROUP SINCERITE WORLD-AC)に注目だ。今年5月の米国遠征では、400m、1500mの2冠を達成。どちらの種目もリオで金メダルを奪われたRaymond Martin(アメリカ)との競り合いを制し、雪辱を果たした。だが、Martinとの差は、0.22秒(400m)、0.45秒(1500m)とわずかであるだけに、ロンドンでも2人のデッドヒートが繰り広げられそうだ。7月の「関東パラ陸上競技選手権」では、1500mで自己記録を5秒近く更新する3分35秒58のアジア新記録をマークしており、準備は万全。ロンドンの地で世界の頂に立つ。
成長著しい若手の存在
一方、成長著しい若手の車いすランナー(T54 )として注目したいのが25歳の渡辺勝(TOPPAN)と23歳の鈴木朋樹(トヨタ自動車)の2人。彼らはリオに出場できずに悔しい思いをしているだけに、今大会への思いは強いはずだ。
渡辺は2月の東京マラソンで、リオの金メダリストを破って初優勝を達成し、2017年シーズンは幸先いいスタートを切った。その後、トラックでも800m、1500mで自己ベストを更新し、5000mでは日本新記録をマークしている。
世界選手権は、今大会で3度目となる渡辺。初出場ながら10000mで銀メダルに輝いた2013年以来、2大会ぶりのメダル獲得に期待が寄せられている。
鈴木は、世界選手権は2015年に続いて2度目。前回は、強豪揃いの800mで準決勝進出を果たしており、今大会は「決勝に残ることが目標」と語っている。もちろん、その先にはメダルを視野に入れている。
メインとしている800mでは、5月の「Daniela Jutzeler Memorial 2017」で自己ベストを更新するなど、鈴木もまた、順調にレベルアップを図っている。その鈴木が最も意識している相手が、800m世界記録保持者でリオ金メダリストのMarcel Hug(スイス)だ。スプリント力に自信のある鈴木が、ゴール前で世界王者にどれだけ食らいつくことができるかが、見どころのひとつとなる。
リオデジャネイロパラリンピックの翌年、そして東京パラリンピックまで3年という現在、選手たちはさらなるレベルアップを図ろうと、さまざまな試行錯誤を行なっている。そのため、技術、戦略、そして用具開発など、世界のパラ陸上界の動きにも着目したい。また、無名の若手が台頭する可能性も秘めている。果たして、どんな選手がでてくるのか楽しみだ。
8月4~13日には、「世界陸上競技選手権大会」が同じ「ロンドンスタジアム」で開催される。「世界陸上」と「パラ陸上世界選手権」が同じ舞台で行われるのは、史上初。1カ月間、ロンドンは陸上競技の熱気に包まれる。
(文・斎藤寿子)