新競技パラトライアスロン、秦が6位フィニッシュ! リオパラリンピック
リオパラリンピックの大会5日目にあたる11日、リオ屈指のリゾート地として知られるコパカバーナ海岸でパラトライアスロン女子のレースが行われた。前日に男子がレースを終えた同競技は、今大会で初めて採用されたとあって、会場にはIPC(国際パラリンピック委員会)のフィリップ・クレイヴァン会長も来場。風光明媚なビーチで繰り広げられる熱戦を観戦した。
パラトライアスロンはスイム750m、バイク(自転車)20km、ラン(ランニング)5kmの計25.75kmで争われる。これはオリンピックディスタンスと呼ばれる51.5kmのちょうど半分にあたる距離だ。3競技のつなぎ目はトランジションといって、ここでのタイムロスが順位に響くため選手は時間短縮に努める。観客にとっては見どころの一つともなっている。
日本からは男女2人ずつ計4人の選手が出場した。顔ぶれは男子がPT4の佐藤圭一(エイベックス・グループ・ホールディングス)とPT1の木村潤一(NTT東日本)、女子がPT2の秦由加子(マーズフラッグ・稲毛インター)とPT5の山田敦子(アルケア)。ちなみに「PT+数字」は障害の種類や程度によるクラス分けの表記で、大まかにPT1は車いす利用者、PT2〜4は義肢(義足)や装具の利用者、PT5は視覚障害者が対象となる。
男女を通じて最高位は、1時間33分21秒でフィニッシュした秦の6位だった。このクラスの優勝はアリッサ・シーリー(米国)で1時間22分55秒。記念すべき初代金メダリストとなった。
もとはスイマーで泳ぎが得意な秦はPT2クラス8人中、スイムを2番手で上がった。だが続くバイクで遅れをとった。バイクとランのスピードアップは秦の課題だ。
ところが、太ももから右足を切断している秦は大腿義足(太ももから履く義足)をつけているため、「膝継ぎ手」と呼ばれる膝関節の部品で自転車を漕ぐ動きを再現するのが難しい。また、ランでも「板バネ」と呼ばれるカーボンファイバー性の競技用義足をつけて走るのだが、弾力を制御しバランスをとりながら長距離を走るには高い技術を要する。義足自体の耐久性も重要だ。そのため秦はさまざまなトレーニングに励む一方、体の一部である義足の調整にも力を入れてきた。
この悔しさをバネに、2020東京でメダル争いを
レースを終えた秦は開口一番、「無事にフィニッシュできたのは皆さんの応援のおかげです。ありがとうございました」と頭を下げた。そして、レース序盤のスイムの様子を次のように説明している。
「試泳の時よりも波が穏やかで泳ぎやすかったが、それだと他選手にあまり差をつけられないので、前半から積極的にいこうという気持ちでスタートした。(優勝した)アリッサが初めのほうで飛び出したので必死についていこうと思ったが、2番手の選手とバトルになって、ずっとぶつかりながら行ってしまった。自分から少し離れたがブイのところで接触してスピードダウンする展開だった」
また、遅れをとったバイクについても「どんどん抜かれてしまって悔しかった」と話している。
さらに秦はリオ入りしてから断端(切断部分)に水が溜まったことも明かし、連日、選手村の医務室を訪れたと話した。
「試合の前々日に選手村からコパカバーナに移動してきたが、一度、選手村に戻って処置をしてもらった。その甲斐あってレースには万全の状態で臨めたので、スタッフの皆さんにはとても感謝しています」
かつて水泳でパラリンピック出場を目指したこともある秦はリオで夢の舞台に立ち、今の力を出し切れたと言った。だが、メダル争いに絡むことができず悔しい思いをしたのも確かだ。最後は「この悔しさをバネにして、次の2020年東京大会ではもっともっと上を目指したい」という決意の言葉で締めくくった。
(文=高樹ミナ)