佐藤友祈が陸上男子車いす400mで銀 「東京パラ王者」から再び挑戦者となって雪辱を誓う
パリ・パラリンピック第3日の30日(日本時間31日未明、スタッド・ド・フランス)、陸上男子400m(車いす・T52)の決勝が行われ、佐藤友祈(34)が56秒26で銀メダルを獲得した。
金に輝いたのは、ベルギーのマキシム・カラバンだ。彼は、昨年のパラ世界陸上で彗星のごとく登場して以来、圧倒的な強さで勝利を重ねてきた。東京大会で400mと1500mを制覇して金を獲得した佐藤だったが、元ハンドボール選手で高い運動能力を持つカラバンを前に、「挑戦者」の立場でパリ大会に挑んだ。だが、レース序盤は競り合ったものの、最後はカラバンが55秒10でゴールした。
佐藤はレース後、「今年は自己ベストが出ていたので、東京大会のときよりも力がついていることは自信を持って言えます。ただ、マキシム選手の方が一枚上手だった」と振り返った。
21歳の時、突然、下半身が動かなくなった。左腕にも麻痺が残る。原因はまったくわからず、「脊髄炎」と診断されるまで1年以上かかった。その間、病名がわからないので障害者手帳ももらえず、就職もできなかった。
そんな時にたまたま見たのが、2012年にロンドンで開催されたパラリンピックだった。自分と似たような境遇の人が国を代表して晴れの舞台に立っている。それを見て、「よっしゃ、次は僕がリオパラリンピックに出て金メダルを獲る」と決めた。
「自分の将来にも希望が持てずにいました。そんな中、パラリンピックを初めて見た。車いすで陸上競技場を走ってる選手たち、国を代表してその舞台に立っている姿を見て『この人達すげえカッコいいなー』って思ったんです」
その頃から、「金メダルを獲るんで、僕をサポートしてください」と言い続け、実際に東京パラリンピックでは2つの金を獲得した。思い描いたことを実現する。それが佐藤の持ち味だ。
400mでは敗北したものの、100mでは再びカラバンと対決する可能性が高い。パリで勝利するために、大会前にはスタート時の改善に重点的に取り組んできた。佐藤はレース後、力強くこう話した。
「取り組んできた成果がしっかり現れてくれている。次の100mでは、マキシム選手に一泡吹かせてやりたいなと思います」
(西岡千史)