帰りのバスでみんなで歌った「We Are the Champions」【車いすラグビー金メダル会見全文】（1）
記者会見に臨んだ、（左から）橋本、倉橋、池、池崎（撮影：西岡千史）
パリ・パラリンピックで車いすラグビー史上初となる金メダルを獲得した日本代表選手が9月3日、パリ市内で記者会見を開いた。
会見に出席したのは、池透暢（44＝日興アセットマネジメント）、池崎大輔（46＝三菱商事）、倉橋香衣（33＝商船三井）、橋本勝也（22＝日興アセットマネジメント）の4人。会見は、金メダルに至るまでの苦労や熱い想いから日本代表チームのウラ話まで、笑いあり、感動ありの40分間だった。4人が話した全文を掲載する。
金メダルを手に笑顔の日本選手たちとチームスタッフ（撮影：越智貴雄）
池：本日はお集まりいただき、ありがとうございます。日本からたくさんの応援メッセージをいただいて、その中で自分たちは最高の結果を勝ち取ることができました。会場も大歓声で、日本の応援団の方々や、世界中の方々が日本を応援してくれる雰囲気を作ってくれて、私たちは自分たちの持っている力以上のものが、この大会で出せたと思います。
倉橋：こんにちは。目標としていたことを、ていねいに一つ一つプレイして、日本のみんなでこの結果に繋げられたことが、すごくうれしいです。
池崎：やっと金メダルに辿り着くことができました。ここまで来られたのも、たくさんの人に支えられたり、いつも自分たちと一緒に練習している選手だったり、自分たちのために良い環境を整えてくれている方々。そういう人がいたからこそ、自分たちがここまで成長できて、強くなれた。その結果、金メダルを経験することができた。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
これで胸を張って帰国できるし、金メダルという形で恩返しできたことや、大歓声の中でプレーするという、すごく幸せな時間と瞬間を味わうことができました。自分の中では、車いすラグビー、あるいはパラスポーツの魅力を大きく世界中に発信できたのかなと思います。
橋本：まずは現地で応援してくださったファンの方々、そしてテレビから応援してくださったファンの方々に、本当に感謝しています。
僕たちが金メダルを獲得できたのは、皆さんの応援が僕たちの背中を押してくれたからだと思います。どんなにネガティブな感情になっても、会場で声援を送ってくださったことで、自分たちはあきらめずに最後までプレーすることができ、結果、金メダルを獲得することができました。本当に幸せ者だなと思っています。
東京大会で悔しい思いをして、かつ無観客での大会だったので、有観客でのパラリンピックという舞台が楽しみでした。目標としていた金メダルを獲得することができて、有言実行できて、ほっとしています。
金メダルを獲ってお菓子パーティー
金メダルを手に笑顔の日本選手たちとチームスタッフ（撮影：越智貴雄）
──昨日の夜は寝れましたか？
池崎：（試合が終わる時間が）遅くなりましたけど、遅くまで自分たちの勝利を喜んでくれた人たち、日本から応援してくれた人たち、その人たちにメッセージを送ったりしていました。また、こっち（パリ）に来てくれている人への挨拶などをしていて遅くなったのは、すごくいい時間を過ごせたなと思います。
僕はさっさと寝ましたけど、興奮して寝られなかった人もいるだろうし、それぞれの思いを振り返りながら過ごしたということはあるとは思いますが、自分は寝ました（笑）
池：僕もたくさんの応援メッセージに勇気づけられて、まだ読めていないメッセージもたくさんあって、本当はすぐに返したいのですが……実はチームメイトとは金メダル取ったらお菓子食べて、乾杯しようかなと。ジュースですけど、そんな時間をみんなで持っていました。
僕は先に寝たのですが、夜通し話し込んでいるメンバーもいました。昨日しかない大切なその瞬間、その時間を、それぞれが思い思いに過ごしたのかなという感じです。
僕はベッドでスーッと一瞬で寝てしまいました。疲れてたんだと思います。
──ちなみにみんなで食べたお菓子の種類は？
池：ポリンキーとわさビーフ、そして高知のミレーのビスケットです。みんなで食べることができたらなと思っていました。
池崎：なんで、わさビーフあったの言わないの。俺が好きなの知ってるでしょ。
池：池崎さんと食べられたらなと持ってきたんですけど、（中町）俊耶が「これ開けていいッスか？」って言って、パリっと開けちゃって……。
池崎：なんで連絡してくれなかったの？ 俺も食べたかった……。
池：たぶん、いい感じにシケってるのが残ってるから、それを。
池崎：シケってる……。
池：まだ、あたりめがありますから。
池崎：じゃあ、あたりめで。
池：そんな感じでパーティーをしてました。
倉橋：私も、試合が終わってたくさんのメッセージをもらっていて、応援に来てもらったみんなに会えて、いい時間を過ごしました。
その後は同じなんですけど、いや、私はポテチを持ってきていて、それをみんなで食べたかったんですけどその時間がなかったので、小さいラーメンや焼きそばを食べたら、朝起きたら胸やけがして、苦しかったです。
でも、ベッドに寝転がったらすぐに寝ました。
バスの中でみんなで熱唱
金メダルを手に笑顔の日本選手たちとチームスタッフ（撮影：越智貴雄）
橋本：帰りのバスは一台で全員乗ってみんなで帰りましたが、僕が遠征の時に毎回持ってきているスピーカーで音楽を流していました。選曲は乗松選手だったんですけれども、みんなで熱唱しながらバスで帰ってきました。
その後は池選手と同じ形で、コーラで乾杯をして、お菓子を食べて寝ようと思ったけどなかなか寝付けず、4時ぐらいですかね。やっと眠れたと思って、7時10分ぐらいにアラームかけてたんですが、気づいたらもう7時半ぐらいでした。ギリギリ出発に間に合うか間に合わないかで焦りました。でも、金メダルを獲れたことが何よりも嬉しくて、体は本当に疲れてるのに、なかなか寝付けなかった感じでした。
──バスの中で何を歌ったんですか？
橋本：何でしたっけ？
池：We Are the Champions（笑）
──今やりたいことと、次の目標を教えてください。
池崎：短期的なことで言うと、とりあえず今は、喜びと達成感に浸りながらも、ちょっと休みたいという気持ちです。
長期的には、終わったばかりで何か考えるということはしていないのですが、金を取ったからこそ、いろんな人にお祝いされたり、いろんなメディアに出演する機会も、たぶん増えてくると思うんです。そういうこともやりながら、パラスポーツ、あるいは車いすラグビーの魅力を発信をしていくのもメダリストの役割だと思うので、それを少しずつこなしながら過ごしていきたいと思っています。
池：僕も池崎さんと、ほぼ同じです。お世話になった方々、応援してくれた方々にこのメダルを持って、感謝を伝えに行って、全国行脚しながら会いに行きたいなと思っています。
倉橋：私も同じですが、たくさん応援してくれた友人や多くの人に会いに行きたいと思っています。その旅行をしたいなと思っています。4年後のことまではまだ考えられてないので、まずはしっかりと体を休めたいと思っています。
4年後は自分が日本代表を背負っていく
橋本：僕自身も、東京と福島を行ったり来たりしていて、なかなか家族との時間がとれなかったので、日本選手権で副賞として獲得したクルーズ（の旅行券）があるので、両親と一緒に北海道あたりに行けたらいいなと思っています。
あとは、友人から「ご飯に行こう」と言われても、自分がタイミングで東京にいたり、合宿だったり、大会だったりでタイミングが合わないことが多かったので、友達とも一緒にご飯に行って、プチ旅行的なことができたらいいなと思っています。
4年後に関しては、僕もまだ意思がちゃんと固まっているわけではないですが、4年後は日本を背負っていかなければならないと思っている一方で、まだやらなければならないことがたくさんあります。
若い選手の発掘や競技の普及活動にも力を入れて、車いすラグビーやパラスポーツの魅力を多くの人に発信できたらいいなと思っています。
＞＞（2）に続く
