パラサイクリング藤田、圧勝でつかんだ確かな手応え
19日に開幕した「第5回アジア・パラサイクリング自転車競技選手権大会」(ロード:東京都大島町・トラック:静岡県伊豆ベロドローム)、トラック種目2日目の27日、今年9月のリオデジャネイロ大会で3度目のパラリンピック出場を目指す藤田征樹は、男子3キロ個人パーシュート(C1-3クラス)で予選を1位で通過すると、決勝でも圧倒的な強さで優勝。リオに向けて、順調な仕上がり具合を見せた。
「この種目は、アジアでは負けてはいけないというふうに、自分にプレッシャーをかけていた」という藤田。しかし、不安がなかったわけではなかった。藤田は昨年11月の「ジャパンパラサイクリングカップ2015」では、同種目で自身が持つ日本記録を3秒以上も上回る新記録(3分36秒164)をマークした。ところが、同大会最終種目のロード・タイムトライアルで左手の甲を骨折し、約2週間、休養を余儀なくされ、完治するのに約2カ月を要した。
「日本記録を更新した勢いのまま、この大会にも臨みたかったが、ケガをしたことでそうはいかず、一度リセットしなければならなかった。そこから改めてコンディションを上げていく中で、手探りの状態だった」
それだけに、どんな走りをするのか、自分自身でもわからなかった。
だが、その不安は杞憂に終わった。午前に行なわれた予選で、まずまずの好タイムで走り、2位の中国人選手に3秒近くの差をつけて1位通過。「状態の良さを確認することができた」藤田は、午後の決勝では「チャレンジの走り」を見せ、スタートから予選よりも速い走りでタイムを刻んだ。後半になってもスピードは落ちず、2キロの通過タイムは、予選を1秒592上回っていた。その2キロを過ぎたところで決勝の相手を追い抜き、レースが終了。3キロを走り切る前に藤田の勝利が決まったため、記録は出なかったものの「日本記録を更新できるという手応えを、しっかりとつかめたことは大きな収穫」と語った。
一方で、銀メダルを獲得した中国人選手が予想以上に力を付けてきていることを感じ、驚いたという。「海外の選手は、どんどん強くなっている。そこは要注意しなければならない」と気を引き締めていた。
3月にはトラックの世界選手権に出場する。それがリオへの切符をつかむための最後の戦いだ。現在、パラサイクリングで日本に与えられている出場枠は男女1つずつ。まずは、しっかりと出場権獲得を狙う。
「今やっているのは、すべてリオで勝つため。そのためにやらなければいけないことが、またまだたくさんある。それをひとつひとつ積み上げていけば、もっと上がっていけると信じている」
今大会で自らの伸びしろを確信した藤田。さらなる高みを目指し、リオへの準備を進めていくつもりだ。
文:斎藤寿子 写真:越智貴雄
第5回アジア・パラサイクリング選手権、藤田征樹の結果
〈ロード〉
タイムトライアル(C1-5) 金メダル
〈トラック〉
チームスプリント(混合C、藤田、石井雅史、相園健太郎) 銀メダル
3キロ個人パーシュート 金メダル
1キロタイムトライアル(C1-5) 4位