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競技レポート

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初出場の辻内、雪辱の“100点満点”の銅メダル! パラ競泳世界選手権2019

 ロンドンで開催されているパラ競泳の世界選手権。大会4日目の12日(現地時間)、女子100m平泳ぎ(SB13=視覚障がい)で辻内彩野(三菱商事)が、1分19秒85のタイムで銅メダルを獲得。“世界一決定戦”初出場の辻内が初めて表彰台に上がり、満面の笑顔を見せた。

「意識した」平泳ぎで世界新の山口からのアドバイス

銅メダルを手に笑顔の辻内(撮影:越智貴雄)

「昨日の悔しさを晴らせたことが嬉しいです」
 決勝のレース後、辻内の口から出てきたのは雪辱できたことへの喜びだった。

 前日の11日、辻内は最も得意とする100m自由形に臨んだ。予選では自己ベストを更新する1分00秒31の好タイムを出し、ゴール後には思わずガッツポーズ。順位もトップからわずか0.05秒差の2位につけていた。

 自身初のメダルが期待された中、辻内は決勝に臨んだ。「前半から飛ばして、後半は腕が上がらなくなるくらいにすべてを使いきります!」と宣言していた通り、スタートから思い切りのいい泳ぎで50mのターンをトップで折り返した。しかし、本当に終盤は「腕が上がらなかった」と言い、4位(タイム、1分00秒29)という悔しい結果に終わった。

 いつもは笑顔で快活にインタビューに応える辻内だが、この時ばかりは目に涙をため、必死にこらえている様子がうかがえた。

 その雪辱を果たそうと臨んだ今日のレース、予選では前半7着からの巻き返しで4着につけた。そして現地時間の午後6時半過ぎ、辻内は決勝に臨んだ。

 レース直前、脳裏に浮かんできた言葉があった。前日、男子100m平泳ぎ(SB14=知的障がい)で世界新記録を樹立し、今大会日本人初の金メダルに輝いた山口尚秀だ。実は山口もまた予選敗退を喫した前日のレースでの悔しさをぶつけていたのだ。

「どうすれば平泳ぎで速く泳げる?」
 辻内がそう率直に訊くと、山口はこう答えたという。
「フラットな姿勢が大事です」

 新世界王者の言葉を素直に受け止め、意識して泳いだという辻内。そして勝負は自分が得意とし、相手がバテてくるだろう、後半と考えていた。

「レース分析の先生からも『あわてずに泳いで、最後に爆発しろ』と言われていました」

その指示通り、辻内は焦ることなく前半を泳ぎ、4着で50mのターンを折り返した。そしてこの時、一瞬、周囲に視線を送ると「いろんな選手が横一線にいた感じがした」と言い、「後半は上げていかないとまずいな」と思ったという。熾烈な3位争いが繰り広げられた後半、最後は1.21秒差で辻内に軍配が上がった。

 ゴール直後はメダル獲得がわからなかったという辻内。それでも周囲から次々と自分の名前を叫ぶ声が聞こえてくると「あ、勝ったんだな!」とわかり、嬉しさがこみ上げてきたという。

「(前日の)本来取れるべき種目でメダルが取れなかったのが悔しくて、それをぶつけられたので、100点満点のメダルかなと思います」

 残るは2種目。1日休養日を置き、混合400mリレー49ポイントと、得意の50m自由形で再び積極的な泳ぎを見せるつもりだ。

木村は銀メダルで出場枠獲得 富田は悔しい4位

 木村敬一(東京ガス)と富田宇宙(日体大大学院)は男子200m個人メドレー(SM11=視覚障がい)に臨み、木村が銀メダルで出場枠を獲得した。「ようやく代表としての責任を果たすことができた」と木村。「(今大会これまで4位、3位、2位ときて)あとは1位しか残っていないので、それを目指して頑張ります」と、世界ランキング1位で臨む15日の100mバタフライでの金メダル獲得にも意欲を示した。

 一方、富田は予選で自己ベストを更新し、調子の良さをうかがわせていた。しかし、決勝では2種目目の背泳ぎから3種目目の平泳ぎへのターンの際、真っすぐに壁を蹴ることができず、コースからはみ出るリスクを考慮して深くかかずに早めに浮きあがった。そのためにタイムを伸ばし切ることができなかったと言い、4位という悔しい結果に終わった。しかし、富田が得意とするのは100mバタフライと400m自由形。これからが本当の勝負だ。

(文・斎藤寿子)

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