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競技レポート

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金メダル1号! 村岡「勝つか転ぶか」貫いた攻めの滑り 平昌パラリンピック

果敢に攻めた滑りをみせた村岡(撮影:越智貴雄)

 平昌パラリンピック競技5日目の14日、アルペンスキーでは大回転が行われ、女子座位の村岡桃佳(早大)が優勝し、今大会日本人第一号の金メダリストとなった。これで村岡は今大会4個目(金1、銀1、銅2)のメダル獲得となり、冬季パラリンピックにおける単一大会での最多タイ、さらに冬季パラリンピック史上、男女通じて最年少(21歳)の記録を樹立した。

金メダルを獲得した村岡の滑り(撮影:越智貴雄)

どうしても欲しかった「金メダル」

 その瞬間、スタンドからはどよめきにも似た声があがった――。

 アルペンスキーでは今大会4種目目となった大回転。午前に行われた1本目で、村岡が1分13秒47をマークしてトップに躍り出た。それは、2位に1秒40差をつける好タイム。「金メダル」はもうすぐそこにあった。

 2本目は守りに入る気持ちが出てきてもおかしくはない状況だった。だが、今大会の村岡は攻めの姿勢を決して崩さない。
「どうしても金メダルが欲しいという気持ちがありました。だから、“勝つか、それとも転ぶか”そんな滑りをしようと思っていました」
 その言葉通り、ゴール地点に設置された巨大スクリーンからも、攻めの滑りをしていることがはっきりと見てとれた。

 そして、ついに待ちわびていた“瞬間”が訪れた。スタートからの勢いを緩めることなく、村岡は一気にゴールまで滑り切った。そして、電光掲示板で自らの名前に「1」がついていることを確認すると、村岡は照り付ける太陽に勝利を告げるかのように、高々と左腕を挙げた。そこには、嬉しさ、達成感、そして安堵感が入り混じっていた。

 ゴール後、真っ先に駆け寄ってきたのは後輩の本堂杏実(日体大)だったという。
「見たら、もう彼女が大泣きしていたんです。『なんで、あなたが先に泣くの?』と思いながら、なぜか私の方がもらい泣きをしてしまいました(笑)」

13日、スーパーコンビで銅メダルの村岡桃佳(撮影:堀切功)

“熱さ”の中にあった“冷静さ”

 実は、これまでの村岡は1本目でトップに立っても、2本目で逆転負けすることがほとんどだったという。だが、「今日だけは、絶対に嫌だ」と思っていた。なぜなら、残り2種目(大回転、回転)で、まだ手にしていない金メダルを取るとすれば、この日の大回転でしかないと考えていたからだ。「これが最後のチャンス」という気持ちが、攻めの姿勢を崩さなかった最大の要因となった。

 村岡は2本目を1本目の好タイムをさらに0.41秒上回るタイムで滑り、合計タイムは2分26秒53。それは2位に3秒近くも差をつけた、まさに「ぶっちぎり」の勝利。「新女王の誕生」にふさわしい結果となった。

2本目のスタート前、天を見上げる村岡桃佳(撮影:越智貴雄)

 そして、村岡は滑りながら、これまでにない感覚を覚えていた。
「1本目も2本目も、スタートの時、とても緊張してはいましたが、一方で落ち着いている自分もいたんです。滑っている時もアドレナリンが出ているんですけど、熱くなりすぎずに、冷静にコースのことについて分析している自分がいました。こんなことは初めての経験でした」
 今、村岡はアスリートとして新たなステージに立ち始めたのかもしれない。

 今回の金メダル獲得で「自分の限界を超えた実感があるか」という記者からの質問に、村岡は大きな声で元気よくこう答えた。
「まだです。まだ限界は超えていません!上にあります!」

 村岡桃佳、21歳。桃の花は、まだまだ咲き続ける――。

(文・斎藤寿子)

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