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日本選手団に弾みをつける 銀1個と銅3個の計4個を獲得! リオパラリンピック

男子60kg級で銀メダルを獲得した廣瀬誠(撮影:堀切功)

男子60kg級で銀メダルを獲得した廣瀬誠(撮影:堀切功)

 7日(日本時間8日)に開幕したリオパラリンピックは皮切りの柔道で、男子60kg級の廣瀬誠(愛知県立名古屋盲学校)が銀メダル、66kg級の藤本聰(徳島県立徳島視覚支援学校)と100kg超級の正木健人(エイベックス・グループ・ホールディングス)、女子57kg級の廣瀬順子(伊藤忠丸紅鉄鋼)が銅メダルを獲得した。中でも開会式翌日に今大会最初のメダルをもたらした廣瀬誠は、日本のメダル第1号として日本選手団全体に弾みをつける役目を果たしている。

 その廣瀬誠は初戦の準々決勝と準決勝、いずれも一本勝ちで決勝へ進んだ。決勝の相手は世界ランキング1位のシェルゾド・ナモゾフ(ウズベキスタン)。開始10秒に袖釣り込み腰で技ありを奪われるも、積極果敢に攻めていった廣瀬だったが、1分20秒過ぎ、払い巻き込みを仕掛けたところで逆に隅落としの技ありを奪われ、合わせ技で一本を取られてしまった。
 しかし、本人に悔いはないようだ。「アテネの頃よりも世界のレベルが上がっている中で、メダルを取るのはすごく厳しかった。今回の銀メダルは同じ銀でも重みがあるし、僕にとって最高のメダル。胸を張って日本に帰りたい」と語り、家族をはじめ周囲のサポートに対して、「ここまでやって来られたのは合宿で一緒にやってきた藤野コーチや道場の仲間、そして何より子どもたちと妻の支えがあったから。僕を産み育ててくれた両親にも感謝したい」と何度も感謝の言葉を口にした。

果敢に攻める廣瀬誠(撮影:堀切功)

果敢に攻める廣瀬誠(撮影:堀切功)

障害は不便だけど不幸ではない

 17歳の時、視神経の病気で視力が落ち、できないことが増えた廣瀬は当時、「障害=不幸」だと思っていたそうだ。だが柔道を通して多くの出会いに恵まれたことで人生観が変わったという。
「今でも障害は不便だけど、不幸ではないと思える」と廣瀬。その実感を、同じ視覚障害を抱える人たちに伝えていきたいという。また、何でも好きなことに打ち込むことで人生が豊かになるとも話している。
 大一番が終わったばかりで今後のことはまだ考えられないというが、2020年には東京大会もある。障害者スポーツへのサポート体制がより充実していくであろう4年間で、自身の経験や知識を視覚障害柔道に還元できる活動をしていきたいと廣瀬は話した。

パラ柔道女子に日本初のメダル

試合後、夫の廣瀬悠(右)は妻の順子にねぎらいの言葉をかけた(撮影:高樹ミナ)

試合後、夫の廣瀬悠(右)は妻の順子にねぎらいの言葉をかけた(撮影:高樹ミナ)

 自身がパラリンピック初出場、そして夫婦そろって日本代表に選ばれた珍しいケースとして廣瀬順子が注目を集めた。目指すは夫の廣瀬悠(はるか)と二人でメダル獲得。競技2日目に出番を迎えた
妻が先に銅メダルに輝いた。日本のパラリンピック柔道で女子のメダル獲得は初の快挙だ。
 昨年12月の結婚以来、廣瀬夫妻は公私ともに支え合ってきた。特に競技においては「寝技の鬼」との異名を持つ夫の技術に学び、リオパラリンピックでも夫のアドバイスを頼りに戦った。準決勝で地元ブラジルの選手に一本負けを喫したものの、そこから気持ちを切り替えて3位決定戦に臨めたのも二人で重ねてきた準備があったからだったという。
 実際、メダルがかかった大事な一戦で過去2戦2敗と分の悪い相手に対し、廣瀬は開始早々、大外刈りで有効のポイントを与えるも、積極的に技を仕掛け、2分過ぎに一本背負い投げで技ありのポイントを奪った。そこからそのまま横四方固めで相手を押さえこみ、一本勝ちで銅メダルを決めた。
「絶対に負けたくないと思って試合をしました。夫が試合前にもアドバイスをくれて、それが役に立って勝てたと思います。夫が指導してくれて取れたメダルでもあると思うので、すごく感謝しています」
 一方、夫の廣瀬悠は男子90kg級でロンドン大会の金メダリストに1回戦敗退。敗者復活戦でもロンドン大会の銀メダリストと対戦し、4回の指導を受けて反則負けを喫した。期待された夫婦そろってのメダル獲得ならず悔しさをにじませたが、「2020年東京大会では二人で金メダルを取りたい」と最後は笑顔も見せた。

銅メダルを獲得した正木(右から2番目)(撮影:堀切功)

銅メダルを獲得した正木(右から2番目)(撮影:堀切功)

 また、パラリンピック5大会連続出場のベテラン藤本は、3位決定戦で手にした銅メダルについて、「もちろん金メダルを目指していたが、(銅メダルでも)最低限の仕事はできたと思う」と語り、ロンドン大会に次ぐ金メダルが期待された正木は、3位決定戦での銅メダルに悔し涙を流した。右膝に故障を抱えて臨んだ今大会を、「金メダルを取れなかった悔しさがこみ上げてきた。一度、畳に上がったらケガは関係ない。お世話になったひとのために、最後は勝って終わらなければいけないと思った」と苦しい胸の内を語っている。

 その他の結果は、男子73kg級の北薗新光(アルケア)と女子48kg級の半谷静香(エイベックス・グループ・ホールディングス)が5位、女子52kg級の石井亜孤(三井住友海上あいおい生命保険)と63kg級の米田真由美(三井住友海上あいおい生命保険)は敗者復活戦でそれぞれ敗れた。

 計4個のメダルを獲得し大健闘だった柔道だが、金メダルが出なかったことがやや悔やまれる結果となった。

(文/高樹ミナ)

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