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【選手コメント全掲載】“準決勝の壁”を破壊した車いすラグビー日本 金メダルへの道「最後は神様が決める」

パリ・パラリンピック第5日の9月1日、車いすラグビーの準決勝がシャンドマルス・アリーナで行われ、世界ランキング3位の日本代表は同1位のオーストラリア代表に52ー51で勝利した。日本はロンドン、リオ、東京の3大会連続で準決勝で敗退したが、パリで悲願の決勝進出を果たした。決勝の相手は米国で、2日夜(日本時間3日午前2時半)に試合開始予定。

準決勝で勝利した後、報道陣のインタビューに応じた選手・コーチのコメントは以下の通り。

■池透暢(44/キャプテン)

──延長戦のスチールは狙い通りですか?

狙い通りではなかったです。もう必死にやっていて。ローポインターにボール出るなと思ったのに、「誰か(途中でボールに)触った? え、パスミス?」みたいな。

「うわっ、きたー」という感じです。誰が(ボールを)くれたんだろうと。それで、走っていいのかなみたいな(笑)。それで2点差になったので、勝利を確信できました。

──ありえないチャンスボールが来たと。

そうですね。やっぱキー・ディフェンス(ゴール前の長方形エリアのディフェンス。守備側は3人までしか入れない)のところで、彼らは手の障害が少し重いので、精度の高いパスができない。そこを狙えたことが、自分たちに有利に働いたのかなと思いました。

──延長戦でのティップオフは狙っていましたか?

狙ってました。(第1ピリオドの)ティップオフはちょっと失敗したので、絶対に延長戦のやつは取ってやろうと思っていました。

──スチールしてゴール決めた時、床にボールを叩きつけましたね。

あれ、テレビで海外の選手がやっていたやつです(笑)。(前ヘッドコーチの)ケビンにはそういうことするなと言われていたのですが、思わずやってしまった。

──これまで準決勝を突破できなかったことについては。

銀メダルへの思いは2016年の(リオ大会の)悔しい思いから、ずっと自分の日々のトレーニングを支えてきたものでした。ただ、会場に入ると、僕の中では金メダルを獲るための準備はもう終わっていて。金・銀・銅という結果は自分ではコントロールできないから、ただベストを尽くす。それだけでした。「最後は神様が決める」ぐらいの気持ちでした。そういうつもりで試合にのぞんでいるので、勝とうが負けようが悔いはない。そのぐらいの気持ちで決勝にのぞむつもりです。

──準決勝の壁を前に硬くならなかったのですか?

(3大会連続で敗退している)準決勝の壁があって、みんな意識しないようにはしてたかもしれないけど、これまではゲーム中に硬くなってたり、ミスが続く場面もありました。

──試合前はスムーズに入れましたか。

スムーズに入れました。(東京大会に出場した経験のある)11人が悔しい思いをしていて、どのように(準決勝に)臨まないといけないか。意気込みすぎてもいけないし、日本チームが最も力を出せる状態を作らないといけない。それは過去のいろんな国際大会も同じでした。

この壁を越えようとする時に、全員集めて何かしようかなと思っていたのですが、ナシにしました。いつも通り行こうと。自分たちのやってきたことに自信を持とう。それで何もしませんでした。

──第4ピリオドの最後の14.85秒は、どんな心境でしたか?

自分たちでやってきたことに自信を持とう。それをやれば絶対に勝てると。自分たちの力で絶対に逆転できると声掛けをして、最終ピリオド迎えました。それを、全員がやり続けたということです。

──明日の意気込みは。

僕は意気込みすぎると、ガッチカチになってダメなので、楽しむ気持ちしかないです。

キャプテンをずっとやっていますけど、僕には信頼できる11人がいる。明日は僕は1人の選手として、最高のパフォーマンスを決勝の舞台で出し切る。そこに集中して、最高の結果になるかどうかは、もう、僕の中では関係ないです。最高のプレーをするだけです。

でも、関係なくないな。やっぱり(金メダルが)欲しい。欲しいです! 勝ちます!!

──決勝に向けて体力は残ってますか?

今はスカスカです。今から充電します(笑)

■池崎大輔(46)

──(池選手と)二人は東京大会までも一緒にやってきました。

やっと自分たちが目標としている舞台に明日立てる。その舞台で、今までやってきたことを出し切る。自分達らしいラグビーをする。それに尽きます。あとは、(予選から準決勝までの)4試合の一戦一戦、日本チームは強くなって成長してきたので、明日の決勝の舞台でみんなで喜びたいと思ってます。

──同点に追いついた第4ピリオドについては。

エンドラインで(オーストラリアの選手の)ボンドとライリーを攻めて、ターンオーバーを取って、とりあえず同点にするつもりでした。そうするとボールが自分たちのところに来て、それをしっかりスコアにできて、延長になった。そこは自分たちの粘り勝ちで、気持ちの強さが実を結んだのかなと思います。

──そこで流れが変わりましたか?

勢いがこっちに来ている感じはありました。

──延長入る時は、日本に流れが来ていると感じていましたか?

流れはたぶん、(延長戦が入る前に)1回切れたと思うんです。それを池がしっかりタップを取ってくれて、そのアドバンテージから入れた。そこから日本の勢いがついてきたと思います。勢いは自分たちで作る。流れは自分たちで作るもの。それができたと思います。

──日本チームにミスがありました。

みんなミスはします(笑)。でも、今回の僕は、ミスをしても気持ちはぶれてない。

──明日の意気込みは。

明日、見てください。自分たちは何のために来てるのか、みなさん知ってますよね。明日の日本チームの試合、瞬きしないで見ておいてください。

■橋本勝也(22)

準決勝が始まる前、控え室で池崎選手から、耳元でこそっと「頼んだ」と言葉をかけられました。その瞬間に、東京大会のいろんなことが蘇ってきて、フラッシュバックして、すごい吐きそうでした(笑)。

でも、自分たちが今まで東京から約3年間磨き上げてきたものってこれだよな。そう思いながらプレーをしている中で、今日は延長戦に入るまでは自分自身に硬さがあったのかなと。やはり、「準決勝の壁」はなるべく感じないようにしようと心がけていた中でも、頭の片隅にどこかでであって、余計なことを考えてしまったがゆえに、最初はプレーが硬かった。

第4ピリオドまでは自分たちの流れがつかめなかった中で、延長戦に何とか入ることができた。まさか(自分が)スタートから出るとは思ってなかったけど、本当にスタートで出ると言われたとき、またさらに吐きそうになりました(笑)。

ただ、そのときに倉橋選手を見たらすごい笑顔で、それを見て肩の力がすっと抜けたなと。今日の試合は正直、自分自身はかたかったけど、倉橋選手を見て肩の力がすっと抜けました。

予選の3試合はずっとこんな感じでやってたよなと。エンジョイ・ラグビーと言ったらおかしいですけど、「楽しむ」をモットーにやってきたよなと。それは、ケビン前監督からも「ハブ・ファン」と言葉をかけられていたよなと。いろんなものがフラッシュバックして、自分らしいプレーが最後の最後でできたのかなと思ってます。

──試合が終わってから池さんと抱き合って、泣いているように見えました。

そうですね。やはり、東京大会の準決勝。本当に何もできずに終わってしまった。当時は、「何のために俺ここにいるんだろう」と考えていて、早く選手村を出て、地元に帰ってトレーニングしたいなっていう思いがありました。それが、今日の試合は本当に今大会の鍵になるなと思っていた中で、最後の最後、自分がコート上で勝利の瞬間を迎えることができた。その意味で、今までやってきたは間違っていない部分もあるのかなと。

最後の最後は、本当に明日が、そういったものをすべて証明すると思っているので、(今日は)泣くのが早かったかもしれないですけど、いろいろ考えていると、感じるものがありました。

───オーストラリアのエースのライリーに押され気味でした。

彼は経験があるので狙っているのはわかっていたんですけど、池さんと一緒にクロスをするのか、スペースを取って勝負させるのかなど、そういった細かい部分のズレがミスにつながったのかなと。あとはタイムアウトを取る判断が、自分の中では鈍ってしまっていた。そういった一瞬の判断が、決勝では命取りになると思うので、しっかりと備えたい。

──ライリーと競り合ったことはどうでしたか?

今だから言いますけど、本当に楽しかったです。自分が目標としていた選手の1人であるライリー選手と対峙をすることができた。止めることができたり、抜くことができたりという部分で、本当に嬉しかったです。その一方で、自分がここまであがってこれたのは、本当にライリー選手の存在のおかげです。負ける気はサラサラなかったですし、むしろイライラさせて、ストレスをためさせて、自分たちの流れを作っていこうと思いながらプレーをしてました。

──勝利の瞬間はどんなことを思いましたか?

ここまで来たなと。自分たちが目指していたものは金メダル。そして、個人的にはパリ・パラリンピックで決勝の舞台に立って、金メダルを取るためのキープレーヤーになる。その目標を掲げてこの3年間、福島と東京を毎週のように行ったり来たりして。移動時間の方が長いときもあったけど、でもそれ以上に得られるものがすごくあった。今は良い環境があるからこそ、自分たちはここまで来ることができたと思っています。最後、勝利できて本当にほっとしました。

──キープレーヤーになる予行練習は、今日できたのでは?

どうでしょうね。自分自身は目の前の1試合1試合、その瞬間の一つ一つのプレーを大切に今までやってきた。4人でコミュニケーションを取って2オンスをする、あるいはワンオーワンで仕掛ける。そういった判断を瞬時にやる。明日は苦しい展開になることは間違いないとは思うんですけど、その中でも自分たちのチームらしいプレーをして、ディフェンスで世界一を取って、みんなと一緒に国家を歌いたいなと思います。

──明日はどういうチームで試合をしたいですか。

今のチームメイトは本当に最高だと思っています。ふざける人もいれば真面目な人もいて、オン・オフがちゃんとはっきりしている。それをキャプテンがまとめてくれている。だからこそ、今のチームは本当に雰囲気がいいのかなと。We are familyです。このチームは、僕にとっては家族のような存在です。全員で世界一のディフェンスを発揮して、金メダルを獲得して、最高の家族になれたらと思ってます。

■草場龍治(23)

──今の気持ちをお聞かせください。

自分自身初めてのパラリンピックという舞台で、これだけプレータイムをいただけると思っていませんでした。コートに送り出してくれた時は、自分のプレーを全力で出し切ろうっていう思いで最後まで戦いました。

──自分のパフォーマンスについては。

まだチームに助けられてる部分っていうのは多くあるのですが、自分の判断でプレーできるのが少しずつ増えてきたのと思っています。

──厳しい場面での登場でした。

自分も一つの戦力として、チームに必要とされているんだなと感じたので、強い気持ちでコートに立ちました。

チーム全体もそうですけど、自分もコートに送り出されたときは、自分のプレーをしっかりやろう、ゲームをあきらめずにターンオーバーを取るんだという強い気持ちでコートに立てたと思います。

──チームの雰囲気は?

とても良かったと思います。準決勝という気持ちを持たずに、目の前の試合をしっかり戦おうとみんなで話していました。それは良かったと思います。

──緊張はしたけど冷静だった。

コートに立ったら、緊張というよりも、「やってやろう」という気持ちの方が強かったです。

──決勝に向けてお願いします。

ここで満足せず、目標としてきた金メダルに向かって、これまで合宿でやできたこと、国際大会で自分たちがやってきたことを一つずつ丁寧に、目の前のプレーを大事にして、勝利に向かって頑張っていきたい。

■倉橋香衣(33)

──ご自身のプレーは?

練習でやってきたこと、準備してきたことができたと思います。ミーティングで準備してからここまで来て、(試合中も)ベンチからの声でディフェンス変えることも対応できたのでよかったと思います。

──3年前の東京パラリンピックを経験していますが、今日の試合はどうでしたか。

3年前より落ち着いていました。「みんなで準備してきたこと、練習でやってきた内容なんだ」って言いながら、試合に実際にのぞんでいたので、(3年前の東京大会に)比べて落ち着いてできたなと思います。

──劣勢でも緊張はなかったのですか?

そうですね。以前は「あー、これ負けたらもう終わりなんや」といった気持ちがあったと思うんですけど、今日は「ま、何とかなるやろ」みたいな感じでした。それがよかったと思います。

──練習でやっきたことが、できたと。

オフェンスでも「2ハード・2ソフト」で、いろんなプレッシャーをかける。そこからリカバリーして戻る。そういうディフェンスの練習もしてきました。あとは、キーのタイミングもみんなでしっかり合わせてやってきた。それが結果につながったのではと思っています。

──女子選手をもっと増やしたいという思いを、以前に語っていました。

そうですね。女子選手が増えてほしいです。今回をきっかけに、男女混合だから(車いすラグビーは)嫌やなって思う子も、こういう競技があるんやと知ってもらって、何かのきっかけになれればいいなっていうふうには思います。

──オーストラリアもアメリカも、素晴らしい女子選手がいます。

いっぱいいます。女子大会もまた今年あるみたいですが、女子のチームが多くてすごいなと。日本も、女子だけでチームを組んでみたい。女子だけで楽しめる人が増えたらいいなと思います。

──決勝に向けての気持ちは。

これまでやってきたことを、みんなで丁寧に、楽しみながら頑張ります。

■岸光太郎(52/ヘッドコーチ)

──延長に入るときの指示は?

延長戦を想定して3分ゲームはやっていたので、「今こそ練習の成果を出すんだ」という話をしました。

──戦術通りでしたか?

戦術というより、プラン通りでした。

──延長を想定した練習はいつから?

延長想定というよりも、短い時間で負荷のかかる練習ということで、3分という時間管理も含めてやっていました。

──第4ピリオドは苦しい展開が続きました。その時の気持ちは?

選手自身が安定していたので、「頑張るぞ、頑張るぞ」っていう感じでした。こっちから特に押し付けとか、何かを言うこともなく。なんだろう、純粋に僕自身も試合を楽しむような感じになってました。楽しくてヒヤヒヤしてっていう感じですけどね。

──第3ピリオドの終わりでタイムマネジメントの失敗がありました

「さっきのことは忘れようと」。たぶん、僕が言うより池が言ったんじゃないのかな。「忘れていこうよ。切り替えていこう」と。(ミスは)残念だったけど、切り替えができる。今までだったら引きずったかもしれないけど、(切り替えが)できたのは、今までのチームになかった部分で、成長したのかなと思っています。

──第4ピリオドの残り14.8秒はどういう心境でしたか?

もう、選手頑張れっていう感じでした。僕はもう何もできない。本当に頑張ってくれ、走れ、走れという気持ちしかなかったです。

──その時は選手たちに何か声をかけたんですか?

大したこと言ってないんです。本当に「練習通りやっていこう。全然大丈夫だから」と。「いつも通り、いつも通り」「気張らずやっていこうぜ」ということしか言ってないです。

──守備の評価は?

守備は一貫して良かったと思っています。

──ついに準決勝の壁を越えました。

「準決勝の壁なんてない」とは、ずっと言ってきました。そのことが証明できたと思っています。あとは、もう優勝したかのような感じになってますけど、試合はまだ終わっていないし、明日に向けてまた今日と同じように準備をして、試合ができればと思っています。

──決勝に向けての今の気持ちは。

金メダルをと選手は言ってますけども、僕自身は、普通通りに頑張って金メダルを取れたらいいなという感じです。みんなも気張らずにやってもらいたいと思っています。

──ファンに向けて一言を。

決勝も皆さんに喜んでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします。

(西岡千史)

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