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卓球女子で和田が金 いじめと不登校を乗り越え、アジアの新王者に【杭州アジアパラ大会】

金メダルを獲得した和田。タオルで涙を拭いながら、写真撮影に応じてくれた(撮影:越智貴雄)

 中国・杭州で開催されているアジアパラ大会で25日、卓球女子シングルス(知的障害)の決勝が行われ、和田なつき(20、エレファントTTC卓球場)が香港のワン・ティンティンをゲームカウント3ー1で下し、金メダルに輝いた。和田は来年開催のパリ・パラリンピックの出場権も獲得した。

 和田は第1セットを11-13で落としたものの、第2セットからは11-3、11-6、11ー6と連続で奪取。21年の東京パラ銅メダリストのワンを圧倒した。

恵まれた体格から繰り出される得意のサーブを打つ和田(撮影:越智貴雄)

 卓球を始めたのは5年前。小学生の頃からいじめを受けていて、中学2年までは登校拒否で自宅に引きこもる暮らしが続いていた。その後、検査で知的障害があることが判明したこともあり、特別支援学校に通うことになった。近所にあった卓球場に通い始めたのはその頃。理由は、今と比べて体重が17キロ多く、「ダイエットしたかったから」だという。

 外出が少ない生活が長く続いたため、卓球をはじめた当初は練習をしても10分程度しか体力が持たなかった。それでも、試合に負けると「勝ちたい」という思いが次第に強くなり、高校2年の時に本格的に練習に取り組むようになった。身長173センチの恵まれた体格から繰り出される得意のサーブは、10種類以上の形がある。手足の長さは、デフェンスの強さにもつながっている。

 卓球をはじめてからわずか5年でアジア王者になった要因について、道畑総一郎コーチは「本当に卓球が好きで、一人で練習している時の集中力が抜群に高い」と話す。

優勝後、コーチと喜びを分かち合う和田(撮影:越智貴雄)

 最近までは、来年のパリ大会ではなく、28年のロサンゼルス大会を目標にしていたという。予想外のパリ行きの切符を手に入れたことについて聞かれると、「中学生の頃は学校にも行けないぐらい精神的に落ち込んでいた時があってそこから考えると、信じられないような人生で、楽しいけど……怖いときもあります」と笑顔になった。

 この日、金メダルを決めた試合終了のポイントを取ると、和田は道畑コーチのもとに駆け寄って抱き合い、喜びを分かち合った。そして、自分自身に向けて小さな声でつぶやいた。

「すごくがんばった」

【試合後の一問一答インタビュー】

金メダルを獲得し、ガッツポーズする和田(撮影:越智貴雄)

──今の感想を聞かせてください。

まだ優勝した実感がわかないのですが、今回の大会で優勝してパリのチケットが手に入ったので、ほっとしています。

──決勝はどんな気持ちでのぞみましたか。

前のタイオープンの大会でフルセットで負けている相手なので、挑戦者の気持ちで、自分の練習したことを出せればいいなと挑みました。

──1ゲーム目は取られました。

1ゲーム目はレシーブミスが目立ったので、レシーブをしっかり繋ぐと、相手がミスが多かったので、レシーブをしっかり繋いでラリー戦に持っていくことを意識しました。

──今日はブロックしてからの攻撃がよかった。

自分から攻めるとカウンターをもらってしまうので、しっかり待ってから打つようにしました。

──得意のサーブについては。

サーブを出す位置が変わると(球の)角度が変わるので、相手が嫌がるコースだったり、逆に次にブロックが動きやすい位置に動いたりして、いろんな位置から出しました。

──サーブの数はどれくらいありますか?

回転が上、下、ナックルなどを合わせると、10は超えます。

──相手も嫌がっていましたね。

そうですね。サーブは誰にも負けないので、自信はあります。

──最も自信があるプレーは?

相手を揺さぶることですね。嫌がるボールをわざと入れたり、高さを作ったり。変にゆっくり、変に早くしたりするのが得意です。

──国際大会に出たのは昨年が初めてでした。

今年の6月にチェコオープン2023に参加して、その時はベスト4に入ればいいなと思ってたのが優勝して、世界ランクがついて。(その時までは28年開催の)ロサンゼルス大会を狙えたらいいなと思っていたので、自分でもまだわからない感じです。

──今の目標は。

障害を持ってる人たちに、ちょっと勇気をあげることのできる存在になりたいので、試合でも笑顔を忘れずに頑張りたいと思います。

──卓球をはじめたきっかけはダイエットだったそうですね。

そうです(笑)。中学3年の時、今より17キロぐらい多い体重があって、最初は(練習を)10分ぐらいで止めてたのですが、本格的に始めたのは高校2年生です。

決勝戦で勝利し、喜びを爆発させる和田(撮影:越智貴雄)

──最初は短時間の練習だけだったんですね。

そうですね。コーチが結構怖くて、メンタルが弱くて行けない時もありました(笑)。どうしても「勝ちたい」と思うようになって、練習するようになりました。

──その時に比べて、今はどうですか。

中学生の頃は学校にも行けないぐらい精神的に落ち込んでた時があって、そこから考えると、信じられないような人生です。楽しいけど……すごいなんだろう、怖いときもあります。

──登校拒否で引きこもっていた時期もあったそうですね。

小学校の時にいじめがあって、それが怖くて中1と中2はほとんど学校に行っていないです。

──そういった時を経て、いつから「勝ちたい」と思うようになりましたか。

高校生1年か2年の時に(試合で良い)成績が出て、「ちょっと自分天才じゃね?」って思って、始めた感じなんです(笑)

──今はコーチは怖くないですか?

怖いときもあります(笑)。今日も3セット目の時は、(コーチから)必死に言われると「おおっ」ってなっちゃいます。でも、それ以上に優しいです。

──出場が決まったばかりですが、パリ・パラリンピックの目標はありますか。

金を取りたいです。でも、強い人ばっかりなので、自分らしいプレーをできればいいなと思います。

──卓球を始めたことで、変わったことはありますか。

卓球を通じていろんな人と会えるので、それで自分に自信が持てるようになりました。

文:西岡千史

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